一本のサーフボードに、完成はない。
一本のサーフボードが完成するまでには、たくさんのことを考えています。
長さ、幅、厚み、ロッカー、アウトライン、ボトムの形状、そしてレール。
でも、僕が考えているのは、ただボードの形だけではありません。
そのボードに乗る人が、どんなサーフィンをしたいのか。
どんな波が好きなのか。
どんなターンをしたいのか。
どんな乗り味を求めているのか。
お客様と話したことを頭の中に入れながら、その人が波に乗っている姿を想像して、一本のボードをつくっていきます。

同じモデルでも、同じ形とは限らない。
EVOLVEでは、同じモデルのサーフボードでも、乗る人に合わせて少しずつ形を変えることがあります。
ロッカーやアウトラインは、主にCADで設計します。
そして実際にシェイピングする時には、特にレールの形を細かく考えています。
お客様は、一概に厚いレールが好きとも、薄いレールが好きとも限りません。
その人がどのようなターンをするのか。
どんな力の入れ方をするのか。
普段はどんな波でサーフィンしているのか。
そうしたことを想像しながら、レールに少しエッジを入れたり、ボリュームを持たせたり、丸みを調整したりします。
削っている時だけではなく、クロスを巻いて完成した時のボリュームも考える。
手に持った時の印象も大切です。
数値だけでは決められない部分もあります。
今までの経験や、お客様との会話から生まれるイメージ。
そこには、第六感のようなものも働いているのかもしれません。
ほんの少しの違いが、乗り味を変える。
僕自身、自分用につくったボードに乗りながら、いろいろな調整を続けています。
その中で改めて面白いと感じるのが、レールのエッジです。
エッジを少し強くしたり、丸めたりするだけでも、ボードの乗り味が大きく変わることがあります。
例えば、しっかり踏み込んで積極的に波を攻めるサーファー。
波が掘れてくるようなコンディションでは、エッジを少し強めにすることで、スピードや加速感が増し、より攻撃的なサーフィンにつながることがあります。
ところが、あまり掘れてこない、ゆったりとした波では、そのエッジがかえって引っかかるように感じることもある。
だから、エッジは強ければいいというものでもありません。
いろいろな波でサーフィンするなら、標準的なエッジの方が合うこともあります。
大切なのは、どちらが優れているかではなく、
誰が、どんな波で、どんなサーフィンをしたいのか。
そこを考えることだと思っています。
海に入って、また新しい発見がある。
ボードづくりは、シェイピングルームの中だけで完結するものではありません。
自分で乗って確かめることもあります。
お客様の感想を聞いたり、一緒に海に入ってサーフィンを見たりすることもあります。
ボードを持った時の印象。
実際に波に乗った時のフィーリング。
その両方を大切にしながら、少しずつ微調整を続けています。
作る前には気づかなかったことが、実際に海で乗ってみることで見えてくる。
そうして得た発見が、また次の一本につながっていきます。
最高の答えは、お客様の笑顔の中にある。
僕がボードをつくっていて幸せを感じる瞬間があります。
それは、自分がつくったボードに乗るお客様が、いい波のいいところからテイクオフして、スムーズに気持ちよさそうにサーフィンしている姿を見る時です。
そして、そのお客様がインサイドから僕の方を見る。
まるで「今の見た?」と言っているような、嬉しそうな笑顔。
僕もグッドサインを出して、「今の良かったよ」と合図を送ります。
そんなやりとりが、僕は大好きです。
自分が考えてつくった一本のボードで、お客様が気持ちよさそうに波に乗っている。
その喜びを、一緒に分かち合える。
それは、僕にとって本当に幸せな時間です。
だから、ボードづくりは終わらない。
一本一本のサーフボードには、もちろん完成があります。
でも、より良いボードをつくるための探究に、終わりはないと思っています。
もっと気持ちよく走るボードができるかもしれない。
もっとその人のサーフィンに合った形があるかもしれない。
ほんの少し変えるだけで、今まで知らなかった乗り味に出会えるかもしれない。
だから、僕はこれからも考え、削り、乗って、また考えていきたい。
そして、お客様と一緒に新しい発見を楽しんでいきたいと思っています。

一本のサーフボードは完成する。
でも、僕のボードづくりに完成はない。
EVOLVEという名前のとおり、これからも進化し続けていきたいと思います。
Hiroyuki Maeda / EVOLVE FUTURE SHAPE



